東京電機大学 理工学部 電子・機械工学系
流体工学研究室
研究テーマ
平板に衝突する超音速衝突噴流に関する研究
超音速噴流とは音速よりも速い速度で噴出される噴流のことであり,航空機やロケット等の排気噴流やレーザー加工時に溶融物などを除去するために使用されるアシストガス,熱強化ガラス加工時に使用される冷却噴流など,工業分野において多く用いられています.しかし,超音速噴流が噴出によって衝撃波(不連続な圧力増加を伴う,音速以上の速さで伝播する波)や渦が発生し振動や騒音といった問題が生じてしまい,この問題は工場などでの作業環境,加工精度の悪化を引き起こすことや,また場合によっては振動により噴流を噴出する構造物の疲労破壊を招くこともあります.
これらの問題に対処するため,超音速噴流の構造解析や数値解析など様々な研究が行われており,その中でも特に先細ノズルから不足膨張噴流(図1)を噴出する研究では噴流の構造や衝撃波などに関する多くの研究が行われています..
本研究では,平板に衝突する超音速噴流の流れ場に対して,ノズルと平板との距離(ノズル平板間距離)やノズル前後の圧力比などの変化がどのような影響をもたらすのかを数値解析を用いて明らかにしていくことを目的としています.
図4は左記の条件における衝突噴流のよどみ点P1(流れの速度が0になる点)における圧力波形の1周期の間の流れ場の様子を10等分にしてアニメーションにしたものを示しています.
Translational mode
Pithcing mode
転がり案内の非線形な固有振動モード
図1 不足膨張噴流
流れ場の条件
ノズル前後の圧力比 p0/pa=3.4
ノズルの出口直径 D=10 mm
ノズルー平板間距離 L/D=2.0
図2 等密度線図(上半分)と等圧力線図(下半分)
図3 圧力履歴
図4 流れ場の等密度線図のアニメーション
平板に衝突する超音速衝突噴流に関する研究
主に工業分野の、レーザー加工時に使用されるアシストガスや熱強化ガラス製作上の冷却などで使用される、超音速噴流を先細ノズルから大気に噴流を放出する技術があります。
ノズルから離脱する噴流の圧力が大気圧よりも高い場合は不足膨張と呼ばれ、振動や騒音の発生などの問題が発生します。これによって噴流を噴出するノズル等の疲労破壊を招くこともあるため、不足膨張噴流についての問題を解決するために研究を行っています。
本研究では、向かい合うように設置されたノズルから噴出する噴流がお互いに衝突し、放射状に広がる不足膨張噴流に対して、よどみ点圧力と大気圧との圧力比を変化させた場合の流れ場の様子や周波数、数値シミュレーション、高速フーリエ変換(FFT)を用いて解明することを目的としています。
図2 実験装置
図1 不足膨張噴流の等密度線図
ラバルノズルから噴出する超音速噴流に関する研究
ラバルノズルとは流体の速度を超音速まで加速させることのできるノズルであり、主にロケットエンジンやレーザ加工時のアシストガス用、表面改質技術の一つであるコールドスプレーなどに用いられています。コールドスプレーは超音速まで加速させた不活性ガスに微細な金属粒子を乗せ基材に衝突させることで皮膜を生成するものです。超音速まで加速させるには高圧ガスを用いる必要があります。高圧ガスを用いると爆発の危険性が高まったり、高圧ガス保安法の対象となったりしてしまうため、利用現場からは圧力源の低圧化が望まれています。
先行研究により、ラバルノズル出口に急拡大管(カバー)を取り付けることによって噴出された噴流が管の内壁に付着して基底部の圧力が低下することが報告されています。それを利用して、より低い供給圧力で噴流の速度を得ることを目的に、数値解析を用いて研究を進めています。
図1 コールドスプレー
図2 等密度線図
流体-固体干渉過程の数値解析
超音速で飛行する飛行機や、地上に落下している隕石からは衝撃波が発生していて,私たちはそれを大きな音や振動として知覚することが出来ます。
衝撃波は建物や窓ガラス(以下,弾性体)に衝突するとそれらを破壊してしまいます。2013年にロシアに落下した隕石による弾性体の破壊がその代表例です。これに対して近年、防爆性を考慮した強化ガラス等の研究が行われていますが、詳しくは分かっていないのが現状となっています。
そこで本研究では衝撃波が弾性体に衝突した時の弾性体内部への影響を解明するためのシミュレーションプログラムを構築し、様々な条件の弾性体へ衝撃波が当たった時に弾性体に与える影響を解明していきます。先述した研究分野等への応用が期待出来ます。
図1の左側の衝撃波管は、当研究室の実験装置を再現したものです。そこから衝撃波が右側の弾性体に衝突する様子が確認できます。図中の上半分は等圧力線図、下半分は等密度線図です。
衝撃波管
衝撃波管
弾性体
図1 衝撃波が弾性体に衝突する様子
固体干渉課程の可視化実験
衝撃波とは、音の速さを超えて伝わる圧力変化によって生じる波のことをいいます。この衝撃波が固体表面に衝突すると固体内部に力の波が生じます。この波を応力波といい、応力波が生じるとその固体の破壊をもたらすことがあります。例えば、隕石の落下により発生した衝撃波による構造物の破壊などが挙げられます。このように、衝撃波と固体の干渉問題についての研究が多くなされていますが、衝撃波と固体内部を伝播する力の波の研究については、まだ多くありません。
このことから、流体と固体の相互作用に関連し、衝撃波を弾性体に衝突させたときに生じる現象の研究を進めています。
プラスチックの一種であるポリカーボネートを加工し、製作した様々な形状のブロックに衝撃波を衝突させて、密度変化を光学的に可視化することで、各形状のブロック内に発生した応力波の様子や波の形状などの解明を目指しています。
図1は、実際にブロックに衝撃波をぶつけた時の、各時間の応力波と衝撃波の移動する様子のアニメーションになります。
図1 応力波と衝撃波の移動の様子
図2 ブロック形状
図3 無隔膜式衝撃波管装置
図4 実験装置概要
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